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金田式CR型超シンプルプリアンプの製作~その2 オールFETスーパー・ストレートプリアンプ~ [オーディオ]

2021年11月22日の日記

前回,金田氏設計のCR型プリアンプを作ることにしましたが,EQ偏差が意外に大きいので,オリジナルの回路のままとせず,EQ回路を少しいじりました。

ということですけど,最終的にiruchan版超シンプルCR型プリアンプはCDやチューナーも聴きたいし,最近はPC音源を聴くことも多いので,入力は切替SWを入れます。MC専用,と言うのがDCアンプ教の絶対教義なんですが,やっぱ,iruchanは邪道です.....。

本格的な回路図は最終回に載せます。まだいろいろとトラブりそうですので.....。

CR, NF Eq amplifier LTspice simulation.jpg本機の回路

えっ,と思った方も多いと思いますが,iruchanも,このプロジェクトをはじめたとき,最初,おやと思ったのです。

この超シンプルCR型プリアンプの記事を見て,何かに似ているな.....と思ったのです。

なんと,この回路はスーパー・ストレートプリアンプのFET版(No.122 MJ'91.9)とほとんど同じなのです。

もちろん,No.122はNF型イコライザなので,当然,EQ素子のところは違うのですが,あとは±VccがNo.122は±15Vなのに対し,こちらは±18Vくらいのもので,ほとんど抵抗値なども変わりません。

それならっていうことで,CR型,EQ型の切り替え式とすることにしました.......(爆)[雷][雷]

こんなバカなこと,考えるやつはいないと思いますけどね.....。やっぱ,教祖様に叱られる~~~!!

No.122はオール・メタルキャンTrのNo.121の続編で,iruchanはこちらはオール・モールドの素子だし,作るつもりはありませんでしたけど,オールJ-FETの音を聴いてみるというのも面白いかと思います。

☆音量調整について

ずっと以前のGOAの頃から金田氏は音量調整はNFB(β回路)にVRを入れて調整する方針となっています。こうすると音声の伝達経路から接点を省ける,という訳です。

とはいえ,非反転入力にNFBが入るわけですけど,その信号との差分を増幅するので,結局,音声回路に入っているのと同じ,と思います。

何よりこの方法の問題点は音量を0にできないこと。

それで金田氏はフラットアンプの入力をショートしてミューティングSWを入れていますけど....。

これはどうにも不便だ,と言うことでiruchanは昔からEQアンプとフラットアンプの間に音量調整用VRを入れています。これだとちゃんと音量は0にできます。

とはいえ,今回の超シンプルCR型プリアンプはこの方式はとれません。

と言うのはEQ素子の後に抵抗が入る形になり,EQカーブに大きな影響が出るからです。

しかたないので,金田氏の方法にするしかありません.....。

☆ゲイン配分について

今回,CR型,NF型共用という横着な回路を設計したので,2つ必要なアンプのゲインの設定に苦労します。
 
金田氏オリジナルの超シンプルCR型プリアンプのゲイン配分は次の通りです。
 
超シンプルCR型プリアンプゲイン配分.jpg
    "オーディオDCアンプ製作のすべて" から
 
今回,NF型と共用にするのですが,EQアンプはMC用だと60dB程度@1kHzのゲインが必要です。つまり,DL-103型ですと,定格出力0.5mVですので,EQアンプ出力で0.5Vになるわけです。
 
金田氏もNF型の場合,ほぼ60dBとなるように設計しておられます。
 
ところが,今回,CR型なので,NF型のEQアンプ出力とほぼ同等になるように出力電圧を揃えようとすると,CRのEQ素子で20dBの減衰があるので,1stアンプの出力としては80dBものゲインが必要,と言うことになります。
 
これ,ちょっとというか,相当,厳しいんですよね......。
 
というのも,素子がJ-FETなので,ゲインが取れないんです。開ループゲインとしては90dBくらいになってしまうでしょうから,厳しいのです。実際,あとで開ループゲインを測定したら,84dB弱でした。バイポーラだと120dBは取れるので楽勝なんですけど.....。
 
と言う次第で,金田氏は▲のゲイン配分の通り,1stアンプの出力は46.4dBですから,EQアンプの出力としてはわずか26.4dBしかありません。足りないゲインは2ndアンプで補う,と言う設計になっています。
 
iruchanはこのことに気がつかず,実際に測定してみてから気がついた,という次第です。バカだな~~~[雨]
 
iruchanはNF型と共用するばかりか,CDやチューナーも接続しよう,と考えているので,金田氏のゲイン配分ではダメです。金田氏のはMC専用だから可能な設計です。
 
と言う次第で,1stアンプは80dBのゲイン設定とします。
 
ただ,この場合,これはあくまでも1kHzでの値,ということで,高周波に行くほど,開ループゲインが落ちてくることも考えないといけないので,実際のゲインは実際に作ってみて,測定して考える,と言うことになりそうです。LTspiceは浮遊容量を考慮しませんので,高周波は苦手で,あまり当てになりませんから.....。

☆プリント基板の製作

最近まで,iruchanはサンハヤトの感光基板で作ってきましたが,数年前に感光剤が替わり,以後は全滅です。一度もうまく行ったことがなく,とうとう頭にきて最近は感光フィルムを使っています。何より普通の生基板が使えるし,フィルム自体もAliやamazonで安く買えるし,何より失敗してもやり直しができるのはありがたいです。

ホンマに今まで,サンハヤトには多額のお布施を払わされ,まったく何の御利益もありませんでした。これじゃ,何の価値もない仏像に多額のお布施を要求するエセ宗教の霊感商法と同じだ,と思います。

ただ,結構,感光フィルム方式もうまくいくまで苦労させられました。iruchanのやり方はこの記事をご参照ください。

その点,双信のSEコンも多額お布施が必要ですけど,高い品質と高音質というありがたい御利益がありますからね.....。

超シンプルCR型プリアンプ基板1.jpg 完成した基板

これでEQアンプ,フラットアンプともに1枚の基板に載っています。残念ながら,2SJ72は4個しか手持ちがないので,フラットアンプは2SJ75で代用しました。また,2N5465も今は入手困難ですので,同特性低耐圧の2N5462で代用しましたが,うまく動作しました。ただ,もう,2SJ75ですら入手困難ですし,2N5462もオンセミがどうも最近製造中止したようなので,今後,入手が難しくなるでしょう。それどころか,TO92の素子自体,もはや全部絶滅危惧種と言っていい状況ですから.....[雨]

超シンプルCR型プリアンプ基板2.jpg

NF型,CR型の切り替え用に2P,3Pのピンヘッダを使いました。実験時はジャンパピンでテストできます。1500pFはSEコンが在庫切れで,スチコンで代用しています。

☆LTspiceによるシミュレーション&実測

基板は無事に完成し,先々週からテストしています。

と,やっぱり.....。

いろいろ問題噴出!

なによりCR型とNF型でゲインが違います。当然と言えば当然ですけど....。

できるだけ,プリアンプの出力電圧はどちらも近い値にしたいと思います。ただ,録音用にEQアンプの出力まで揃えるとなると▲の議論で無理,と言うことがわかっています。

と言う次第ですが,EQアンプはDCアンプに限らず,OPアンプなわけですから,帰還量でゲインが決まります。OPアンプの反転側入力に入っている抵抗(▲の回路図でR8とR11)で簡単に設定できます。

で,極力,EQアンプの出力まで揃えよう,ということで,CR型のとき,1stアンプゲインを80dB近辺とし,EQ素子を通過したあとで60dB,NF型のとき55dB(ともに1kHz)とするとやはり問題が.....。

特に発振したり,ノイズが出たり,と言うことはないのですが,予想通り,CR型の時は高域の減衰が大き過ぎます。これは開ループゲインが足りないせいですね.....。

LTspiceでのシミュレーションでも同じ結果でした。

蛇足ですけど,2N54652N5462は同特性ですが,LTspiceのモデルとオンセミの公式? モデルはかなり違います。Idの設定がうまくいかず,LTspiceに登録されている,2N5462じゃ,動かないのに,2N5465にすると動くとか,かなり苦労しました。

RIAA偏差iruchan R8=390kΩ.jpg実測値です。

20kHzで,CR型の時はー1dBくらいになってしまいます。う~~ん,ちょっと許容できないレベルです。

なお,NF型で100Hz以下が低いのは金田式の特徴で,かならずこうなります。また,1kHzのゲインが揃わないのはあきらめ,フラットアンプで調整することにしました。CR型とNF型で7dBほど差があります。

しかたないので,やはりCR型の1stアンプのゲインはもっと下げないと高周波の偏差が大きいので,46.1dBとし,R8をLTspiceでシミュレーションした結果,200kΩに設定しました。

RIAA偏差iruchan R8=200kΩ'.jpgR8=200kΩ

こうすると,概ね偏差は±0.2dBというところです。1kHzでのゲイン差は11dBと拡大してしまいますが,フラットアンプで十分,調整できる範囲です。


と言うことで長くなりましたので続きはまた次回です。

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金田式IVCイコライザ搭載プリアンプの製作~その2 試作・測定編~ [オーディオ]

2021年11月3日の日記

前回から2ヶ月が経ちました。No.251 ダブルアーム対応超多機能プリアンプ(MJ  '17.2,3月号)を作っています。ようやくプリント基板も完成したし,テスト用の電源も準備できました。

IVC EQ基板.jpg 完成したプリント基板

実験なので,ミクシングアンプはLF356Hでも使ってやるつもりです。この基板で一応,OPアンプ使用のミクシングアンプまで載っています。

プリント基板はいつも通り,感光フィルムを使って自作しました。

残念ながら,SEコンが製造中止になる関係で品薄になっていて,15000pFと2200pFが手に入らないのでスチコンで代用です。

さて,テスト用の電源は+,-の絶対値が等しい電圧を出力するトラッキングレギュレータを作ったので,それでテストしてみます。

トラッキングレギュレータ3.jpg テスト風景

トラッキングレギュレータで±20Vを供給します。原設計では±25Vですが,±15Vくらいから動作するようです。ついでに,レギュレータ出力に1Ω 1/4Wの抵抗をかまして実験しています。こうするとトータル電流が簡単に測定できますし,何かあったらこの抵抗が焼死してくれて,基板を救ってくれますしね.....(^^;)。

まずはEQアンプから。

2個,半固定VRがありますので,調整します。

MJ '17.3月号が後編で,調整方法が載っています。EQアンプの出力につながっている7.5kΩとSAOCの2SK170BLのゲートを接地し,そのドレイン電圧を10Vにします。その後,配線を元に戻し,初段の2SA995のエミッタに入っている500Ωの半固定で出力のオフセットを0VにすればOKです。

う~~ん,でもこれ,やってみると非常に大変です。最初,後編は買い忘れたので,SAOCのFETのドレイン電流を適当にあわせていていたんですが,それでもちゃんとオフセットの調整ができるので問題ない,と思っていたのですが,よく観察すると+600mVくらいからー800mVくらいにオフセットが飛ぶ,と言う現象が出て,困りました。どうしても0V近辺だけ,オフセットが飛んじゃいます.....[雨] 最初,うまくいったのですけどね.....。

ようやく図書館で後編の記事を見つけて調整しました。やはり無手勝流に調整しているとダメですね....。

さて,今度は特性を測定してみます。きれいな正弦波も観測できるので,期待できます。

事前にLTspiceで調べておきましたので,結果を一緒に載せておきます。

IVC型EQアンプテスト回路.jpgLTspiceシミュレーション回路

IVC型EQアンプテスト'21.11.3.jpg結果

が実測結果で,……がLTspiceの結果です。予想していましたが,1kHzのゲインは55dBもあり,たった▲の回路でこれだけのゲインがあるのに驚きます。まあ,無帰還アンプだしこんなものなのでしょうけど,驚いちゃいますね。これでMCカートリッジも十分です。

ただ,前回も指摘していましたが,イコライザの定数は金田氏オリジナルでは低域に大きなピークができるので,560kΩを200kΩとしましたが,逆に200Hzくらいから低下しすぎてしまっています。

一方,LTspiceの方は1kHzのゲインが2.5dBほども大きく,また,イコライザ偏差は20Hzでも-0.1dBと小さいです。

う~~ん,なんでこれほどシミュレーション結果とずれるのかも不思議ですが,560kΩを240kΩとするとLTspiceでのシミュレーションでは+1dBくらいになるので,実機では偏差はほぼフラットになると思います。

次回,EQ素子を変更してテストしてみます。

また,金田氏の記事はまだイコライザアンプのあとにラインアンプがあり,そこでセレクターを経てミクシングアンプを使うのですが,イコライザアンプだけでプリアンプとしてのゲインは十分な感じです。

ということもあろうかと,ミクシングアンプはまだプリント基板を作っていませんし,なによりiruchanも電流伝送アンプは初めてでわからないことばかりなので,とりあえず実験用に,LF356HなどのOPアンプを使って反転増幅器をつくり,それでミクシングアンプの代用にしようかと思っていましたが,ミクシングアンプは不要なようです。

ラインアンプから直接出力するようにしたいと思います。


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