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メタルキャントランジスタを使ったスーパー・ストレートDCプリアンプの製作~その5・発振対策編~ [オーディオ]

2020年9月28日の日記

前回,フラットアンプの超高域発振があるのを発見しました。金田式DCアンプではよくあることですよね。

もっとも,発振自体はそれほど強いものではなく,オシロで観測していて,どうにも輝線が太いので発見した,という程度でした。

周波数的には200kHzくらいで,たいていは2段目の差動アンプの位相補正で収まります。

ということで,前回,2段目の位相補正を20pFにして止めたところまででした。

ところが.....。

f特を見てみると,やはりまだ,200kHz付近にピークが残っていて,4dBくらいあります。

まあ,個人的には1dB以内なら許容しよう,と思うのですが.....。

ということで今週は対策をします。

いくつか対策があるのですが,先ほどの2段目の差動アンプの位相補正コンデンサを増量する,というのが普通ですが,前回,47pFまで増やしてみても変わりませんでしたので,原因は初段にあるようです。

そのほか,一番簡単なのは,真空管アンプでよくやる,微分型位相補正と呼ばれるもので,帰還回路の抵抗にパラに数pF~数十pFのコンデンサを取りつける,というものです。

フラットアンプLTspice.jpg位相補正箇所

ちゃんとTrは8月に作った,2SA6062SC959のモデルを使っています[晴れ][晴れ]

ただ,この場合,帰還抵抗と位相補正用のコンデンサが構成する時定数以上の周波数全体が下がってしまいます。

ピンポイントに特定の周波数だけ下げる,という場合は,初段の差動アンプのコレクタに入っている,2つの抵抗をショートしちゃいます。金田氏もよくこの手を使っています。

と言う次第で,まずはLTspiceで確認してみます。

フラットアンプLTspice f特(位相補正全部なし).jpg 位相補正なし

まずはすべての位相補正コンデンサがない状態です。やはりピークが出ています。

ただ,LTspiceでの結果は600kHz付近にピークがあり,実際にiruchanが組み立てたアンプでは200kHzですから,これくらいずれるんでしょうか。LTspiceだと,配線の浮遊容量などは考慮に入れていませんので。

フラットアンプLTspice f特(2段目位相補正のみ).jpg 2段目位相補正のみ

差動アンプの2段目に位相補正用のコンデンサを入れます。金田氏の原設計どおりの場合です。やはり,かなりピークが抑えられますが,完全には消えません。

フラットアンプLTspice f特(位相補正初段のみ).jpg 初段の位相補正後

最初,600kHzのピークだから,ということで計算上,R14に2.7kΩを使ったのですが,ダメで,どんどんカットオフを下げて,160kHzくらいにしたら,最良でした。少しピークが下がります。

ただ,これでもピークが残ります。

しかたないので,これをあきらめ,やはり微分型位相補正にすることにします。

フラットアンプLTspice f特(微分型位相補正).jpg 帰還抵抗+47pF

見事にピークが消えます。また,200kHz付近に第1ポールがあることもわかります。

ということで実装してみます。

まずは,初段の位相補正を試してみたのですが......。

確かにピークは下がりましたが,まだ3dBほどのピークが残ります。いくつか定数を変えてみてもあまり変わらなかったし,基板上のスペースも厳しいので,早々にあきらめ,帰還抵抗に47pFをパラにしてみました。

flatアンプ特性(実測, cnf=47pf).jpgフラットアンプ位相補正後

予想どおり,見事に200kHzのピークは消えました[晴れ]

ただ,WEの真空管式DCプリに劣ります。-1dBで80kHz,-3dBで100kHzといったところです。半導体プリなんだから,もう少し広帯域でよいし,せめて100kHzまでフラットと行きたいものです[雨]

要は薬の効きすぎ.....という状態なんですね。もう少し位相補正用のCは小さくてもよさそうです。

と言う次第ですが,この宿題はまた後で,ということにしたいと思います。ほかにもいくつか宿題がありますので......。

ただ,宿題をひとつ,片付けました。今回,電源を増強しました。往年の名石2SA5662SC1161を使った超高速プッシュプルレギュレータです。もう,これらのTrはたぶん,製造されてから40年以上経っていると思います。

±10.5Vレギュレータ基板1.jpg フィルタCを増量しました。

今回,1Uという非常に背の低いケースにした関係で,フィルタのコンデンサはRubyconの35V,3300μFを使いました。非常にコンパクトで助かっています。モノラルLP用CR型EQアンプでも使いました。

ただ,フラットアンプもついたプリアンプ用としては,ちょっと少ないのではないかと....。トータル電流は40mAくらいなんですが。

金田氏の第1号プリでもフィルタコンデンサは4700μFです。オリジナルのスーパー・ストレートプリアンプは電池仕様だったので,フィルタコンデンサの値は不明です。

もっとも,第1号プリは1974年のことだし,使用しているケミコンは日ケミのCEWだと思いますが,ブロック電解の50V,4700μFなので非常にサイズがでかくてこのケースには入りません。

ということで,もう1個ずつ,追加しました。合計6600μFなら十分でしょう。それに,ESRの点から考えても,大容量のコンデンサ1個より,小容量のコンデンサを複数パラにした方がESRは小さくなるはずです。

と言う次第で,ようやく完成としましょう。来週は実際に音を聴いてみたいと思います。


     ☆          ☆          ☆

2020年10月3日追記

やはりフラットアンプのf特をもう少し広帯域にしたいと思います。

微分補正用のコンデンサが47pFでは大きすぎるので,LTspiceでシミュレーションすると,10pFくらいでも十分です。また,微分型位相補正が効くことがわかったので,2段目の差動アンプのB-C間に接続した位相補償用のコンデンサは金田氏のオリジナルの5pFに戻しました。

でも......。

フラットアンプLTspice f特(微分型位相補正10pF).jpg CNF=10pFのとき

制御理論から,位相が180゜回ったときに,アンプの閉ループゲインが0dBより上だと発振することがわかります。LTspiceでのシミュレーションでは,-1.06dBでしたので,発振しないはずですが,ゲイン余裕はこれでは少し足りません。回路の実装状況では発振することもあり得ます。

実際,やってみたら,発振はしなかったものの,200kHzでのピークが1dBほど出ました。

ということで,結局,最終的にCNFは15pFにしてみました。

flatアンプ特性(実測, cnf=15pf).jpg最終f特です。

これでも,ch. Rには0.6dBほどのピークが残りますが,ch.Lはピークは消えました。まあ,これくらいでいいとしましょう。

f特は大幅に改善され,-1dBで400kHz(ch. R),200kHz(ch.L),-3dBでそれぞれ,500kHz,400kHzとなりました。100kHzまでは,完全にフラットです。半導体アンプなら,これくらいは必要だと思います。

いよいよ,これで音楽が聴けますね。

最終版の回路をのせておきます。ピンクの部分は改造部分です。音量調整は金田氏の原設計では,β回路に入れていますけど,音量が0にできないこともあり,通常の方法です。それに,β回路に入れたから,といって音声信号がそこを通るわけなので,結局は同じなのでは,と思っています。

スーパー・ストレート・プリアンプ回路(最終版).jpg最終版回路

☆          ☆          ☆

半年以上が過ぎてしまいましたけど,続きはこちらです。音を聴いてみました。

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黎明DCプリアンプの製作~金田式DCプリアンプ第1号・その2:プリント基板~ [オーディオ]

2020年9月20日の日記

黎明DCプリアンプ基板1.jpg プリント基板が完成しました[晴れ]

前回から3ヶ月が経ちました。ようやくモノラルLP用のEQアンプオール・メタルキャンTrを使ったスーパー・ストレートプリアンプも完成したので,こちらを再開します。

さて,まずはプリント基板を作ります。

iruchanも散々苦労しましたけど,ようやく感光フィルムを使った方法でプリント基板がうまくできるようになりました。残念ながら,サンハヤトが売っている最近,また感光剤が変わった欠陥感光基板の使用はあきらめました。失敗ばかりで,とてもうまくいく,とは思えません。失敗してもやり直しができないし,それに値段もとても高いですしね。こんなもの,とても一般消費者に売るものとは思えません。今まで,同社には散々貢がせていただきました。どうもありがとうございませんでした......[雨][雨][雨]

感光フィルムの方もかなり苦労しましたけど,要はコツとしては,うまくマスクの遮光性を確保するため,マスクを2枚重ねにしないといけないということと,現像時の温度も重要で,炭酸ナトリウムの1%溶液を温めながらやらないといけない,というのが最大のコツのようです。だいたい,iruchanは40℃くらいの温度が必要では,と思っています。ほかの方のブログなどを見ると30℃くらい,という感じなのですが,もっと高い方がよい感じですし,とにかく,常温ではダメです。特に冬だとヒーターかコンロが必須で,加熱しないとダメでしょう。

さて,iruchanもそれなりに苦労しましたけど,ようやく一発でプリント基板を作ることができるようになりました。iruchanのやり方はこちらをご覧ください。なにより,この方法は安価な生基板を使えるし,失敗してもまたフィルムを貼って何度でもやり直しができます。もう決してサンハヤトの欠陥感光基板は使いません。

黎明DCプリアンプ基板.jpg 

    エッチングするとこんな感じです。

まだ,サンハヤトの感光剤が変わる前の旧感光基板ほどではありませんが,文字もエッチングできるくらい,きれいにできるようになりました。ただ,まだDIPのパターンなど,隣とつながってしまうところも出てきちゃうので,チェックは重要です。

☆2段目差動Trの差し替え

金田氏は,無線と実験1973年8,9月号では,2段目は東芝の2SA493GRで,'74.1月号の本機で2SA640に代わっています。

金田氏は'91.6月号のスーパー・ストレートプリアンプの記事のところで,第1号は'74.1月号と書いておられますが,'73.8月号のは失敗作と考えておられたのか.....そのあたりはiruchanもよくわかりません。

ただ,さすがにiruchanも東芝の2SA493じゃね.....って感じなので,回路は'74.1月号としました。

この場合,2段目は2SA640なんですけど.....。

iruchanも中坊のとき,半導体パワーアンプ第1号はこのTrで作りましたし,それで,ちょっと愛着のあるTrなんですけど....。

なんかあまりいい音がした,という印象はないですし,金田氏もいつの号かわかりませんが,三菱から2SA726が出るとすぐに交代させています。

ということで,本機は2SA6402SA726が差し替えられるように考えました。

マニアの皆さんはよくご存じだと思いますが,三菱のTO-92のTrは一般のTrと電極配置が異なります。

なぜか,一般的には左からECBなのに,三菱の2SA726はBCEと反対です。

理由は三菱電機が提携していたのが米Westinghouseで,そこから技術導入したから....と言われているのですが,確かにWestinghouseは真空管もTrも作っていましたけど,それほどメジャーじゃなく,すぐに製造を止めてしまって,他社からの購入に切り替えたと思います。

Westinghouseは鉄道の自動ブレーキを発明した,George Westinghouseが創始者で,テスラと組んで,交流の発送電システムを開発したことでも知られていますね。エジソンと電流戦争を戦って,勝利を収めました。米国の総合電機メーカとしてGEと並んで大企業に成長し,半導体やコンピュータも作っていて,原発も作っていましたけど,1990年代には米国の製造業の衰退と歩調を合わせてどんどん事業を売却し,最後まで残った原子力事業を買収した東芝が大やけどして危うく潰れかけたのはご存じのとおりです。今もブランドは残っていますが,RCAやZenith同様,ブランドだけで,製造業としての会社の実態はありません。ちなみに,よく,同社のブランドで6BQ512AX7などの球が秋葉などで売られていますけど,ほとんど日本製です。

トランジスタについても,Westinghouseのトランジスタラジオ,というのが1950年代には売られていましたが,日本メーカの集中豪雨的輸出でRCAやPHILCOなど米国ブランドが駆逐されてしまう中,Westinghouseもラジオの製造もやめちゃいます。Tr自体もあまりWestinghouse製,というのは見かけないのですが.....。問題はいつまで半導体をWestinghouseが作っていたか.....1986年にはPowerexという会社をGE,三菱電機と合弁で設立し,半導体部門を分離しているようです。Westinghouseは最後はパワー半導体を作っていたようです。

そもそも,米国じゃ,GEにしたって,RCAにしたって,早々にどこも半導体製造の看板は下ろしてしまって,半導体はFairchildやMotorolaやNational Semiconductorなど,専業メーカーの独壇場になります。初期の頃でも,RCAとGE以外はほとんど半導体はダメ,という状況だったのですけど....。

そういや,これらの半導体メーカーも今はもうないな.....orz。

Fairchildは今もRSコンポーネンツなんかで売られていますけど,ショックレー研を飛び出したロバート・ノイスたちが設立した,Fairchild Semiconductorとは歴史的につながっているんでしょうか.....。ノイスもここを飛び出してインテルを作るわけですが.....。

と言う次第で,ちょっと脱線しましたけど,理由はよくわかりませんが,2SA726をはじめとして,三菱のTrは電極は位置が異なることがあるので,要注意です。

それで,プリント基板は結構面倒くさく,簡単には2SA726だけ,背中合わせで熱結合すればパターンはそのままで差し替えられるんですけど.....それは格好悪いですよね。

散々考えて,DIP10ピンのソケットを使って,差し替えできるようにしました。DIP8ピンでもできなくはないのですが,どうしてもジャンパー線ができてしまうので,2ピン分追加してジャンパー線なしのパターンを考えました。

2SA726周辺.jpg こんな風に差し替え可能にしました。

これならうまくいきそう......って思ったのですが.....

なんと,DIP10ピンなんてソケット,売っていないんですね.....[雪][雪]

8ピンの次は12ピンになっちゃいます。14ピンならロジックICでよく使いますが,12ピンのICなんてあったっけ,という気もするんですけど。

散々探したら,RSコンポーネンツでDIP10ピンのソケットを売っていました。面倒なら12ピンのソケットでもよいと思います。2ピン分,遊ばせておけばOKです。

でも,iruchanは1列だけ遊ばせておくのはなんかなぁ~って思っちゃいました。

2SA640装着時.jpg 2SA640ほかのとき

一般的な,ECB配置のTO-92Trの時はこの位置に挿します。

2SA726装着時.jpg 2SA726のとき

2SA726の時は下側に挿します。COPALのλ13T半固定が懐かし~~~~。2SK30Aも後の2SK30ATMなどのTO-92より小さい,モールドタイプの旧型です[晴れ] なぜかドイツから輸入しましたけど.....。金田氏が設計した頃はこのタイプだったと思います。できるだけ,オリジナルに近いTrや部品を使おう,と思いましたが,残念ながら抵抗はニッコームばかり......[雨][雨]

     ☆          ☆          ☆

さて,ようやくプリント基板が完成したので,次回は電源からテストしていきたいと思います。



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海外旅行用ケトルを買いました [電子工作]

2020年9月13日の日記

KONKA.jpg 折りたたみ式なので便利です。

去年,仕事でパリへ行ったときにちょっと困ったんですが.....。

驚いたことにたいていあると思っていた,湯沸かし用のケトルがホテルの部屋にありませんでした....orz。

帰ってきて調べてみると,欧州も大陸のホテルには置いてない場合が多いようです。同僚に聞いてみたら,パリにはないことが多いですよ,とのこと。

そういや,iruchanは対英米協調派? だったので,いつも行くのは英米ばかりでした。確かに,今まで,英国や米国のホテルでは必ずケトルが置いてあって,ホテルによっては日本のビジネスホテルみたいにインスタントコーヒーや紅茶のティーバッグが置いてあって,いつも飲んでいましたし,なくなると近所のコンビニでティーバッグを買っていました。

ということでその同僚に薦められて,ケトルを買うことにしました。彼は強者で,いつもパリのホテルじゃ,自炊しているそうです......[晴れ]

確かにiruchanもパンばかりじゃ飽きてしまって,この前はロンドンで寿司買って食べてましたね....。

シリコンゴムを使った,旅行用の折りたたみ式のケトルがあるらしいので,Amazonでポチってしまいました。

とにかく軽いのを,と思って,わりによさげなKONKAというあやしい中国製ですが,今どきどんなものも中国製だし,これはしっかりしていそうなので買ってみました。

買ってみて驚き,意外にいいではないですか[晴れ]

なにより,ケトルって,沸かすだけ,と思っていたのですが,こいつは保温機能があり,サーモスタットで15分くらい経つとまた沸かしてくれます。容量的にも十分で,マグカップ5杯分くらいは沸かせます。600mlくらいは入るようです。

電圧は100/200V切り替え式だし,プラグも日本や米国のA型,英国のBF型,欧州のB型,中国のO型がついているので,まず世界中どこへ行っても困らない,と思いました.....。

KONKA-4.jpg 変換用のアダプタ

韓国は,米国系だったので,最近まで110Vだったのですが,220Vに昇圧し,プラグも変わりました。香港はまだ,BF型が多いと思います。

でも,デフォルトで本体についているプラグが中国のO型なのは残念。昔はあった,日本メーカのものだと,ちゃんとA型がついている,と思いますが....。もう,日本製はないでしょうしね。もちろん,中国製でも日本で売るなら,A型がついていないとダメ,と思います。ちなみにA型は日,米のほか,台湾やタイがそうだそうです。BF型は香港のほか,シンガポールはマレーシアなど旧英国植民地がそうです。インドはごちゃごちゃで,iruchanが行ったときはBF型だったように思いますけど,B型もあるようです。豪州やニュージーランドは行ったことないですけど,中国と同じ,O型だそうです。

KONKA-3.jpg 本体についているO型接地極付プラグ

と言う次第で,日本で使う場合でもいちいち,付属のアダプタを使わないのは不便。

それで,プラグを付け替えちゃおう....と思ったのですが,付属のケーブルが3芯のせいもあるのですが,太すぎて使いにくい。

そこで,ケーブルごと,JISの10A品に交換しました。消費電力は600Wなので,容量的には十分だと思います。

KONKA-2.jpg ケーブルはファストン端子で取りつけられます

サーモスタットに幅4.5mmのタブが出ていて,ファストン端子で接続します。この幅のタブだと,#187が適当です。日本圧着端子製のが秋葉の千石電商で@15円でした。残念ながら,接地極は日本では不要なので,外しました。本来は接地極は必須だ,と個人的には思うのですけどね......。

KONKA-1.jpg プラグは15A品です。

ほんとうはこの10Aのケーブルにプラグがついていたのですが,どうも芯線がプラグのところで断線していたようだったので,プラグもやっぱり交換しました。

     ☆          ☆          ☆

これで,もうパリへ行っても大丈夫......と思ったのですが,コロナのせいでまだ当面行けそうにありませんね.......orz。

それにしても何でフランスのホテルはケトルぐらいないんだ[雷][雷]


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モノラルレコード用CR型イコライザーアンプ(EQアンプ)の設計と製作~その4:試聴編~ [オーディオ]

2020年9月3日の日記

CR型EQアンプ2.jpg ようやく完成しました[晴れ]

プリはPioneer C-21です。ついでに,LPをソニーのMZ-RH1でリニアPCM録音します。

前回,まだEQカーブのおかしいところを調整していました。どうも肝心のRIAAカーブが少しずれていて,再調整でした。

ようやく今日は音を聴いてみます。

ということで,まずはやはりお目当ての英DECCAのffrrカーブから.....。

第2次世界大戦中,英海軍の対潜哨戒システムのひとつとして開発された技術を英DECCAが応用した,といわれています。おそらく,ソナーシステムの受信側のシステムのひとつで,より広帯域の反射音を捉えよう,とするものだったと思いますけど,詳しいことが全然わかりません.....orz。

一体,ソナーの中のどういうシステムだったのか,ということもありますけど,オーディオとしてはどういう機材を使って,広帯域録音を達成したのか....詳しく知りたい,と思っています。

ただ,やはりDECCAのffrr録音はクラシック界ではHiFi録音の代名詞のようなもので,もう,定番中の定番,という感じですね~。特に,ステレオになってからのffssも有名で,アンセルメの一連のCDなどはいまも愛聴されています。

☆Grieg Piano Concerto, Pf:Clifford Curzon, DECCA LXT2657

DECCA LXT2657.jpg

クリフォード・カーゾン演奏のグリーグのピアノ協奏曲を聴いてみます。英DECCA LXT2657です。オケはロンドン交響楽団(LSO)で,指揮はフィストラーリです。

グリーンの紙ジャケットが印象的です。1952年1月の発売のようです。レコード自体は,国内で安く買いました。あまり人気のない盤のようです。まあ,クラシックマニアの間じゃ,英国オケ,というと独墺のオケに比べれば,格下,と思われていますから.....。

盤はいわゆるフラット盤で,ディスクグルーブを保護するためのグルーブガードと呼ばれるへこみがない最初期の盤なんですけどね。普通は結構な値段がしますが,1,000円以下で買えました。

まだ,終戦から間もない時代で,印刷技術もいまいちだったのか,この時代のジャケットは写真を使っていることはまずないし,カラー印刷にはなっていても,せいぜい2色か3色刷のものばかりです。

また,なぜ,この曲かというと,シューマンのピアノ協奏曲と一緒に,最近よく聴くから,ですけど,以前,RIAAで再生して録音したデータがあるので比較しやすいからでもあります。何よりピアノが一番,録音やセットの性能を把握しやすい楽器だと思います。ピアノだと音が悪いとすぐにわかるように思います。

余談ですけど,iruchanは80年代のデジ録盤は買いません。明らかにピアノの音が変です。最近の録音になってようやくピアノの音が聴けるようになった,と思います。やはり,16bit,44.1kHzのサンプリングじゃ,足りなかったのでは,と思います。

シューマンの方は,ウルトラセブンの最終回で使われた曲で有名ですよね。ところが,iruchan,この最終回の曲はずっとグリーグだ,と思っていました.....。確かに,よく似た曲ではあるんですけど.....。大人になってから最終回を見直してみて,気がつきました。

ちょっと比較してみませう。平均音量は揃えてあります。

ffrrで再生した場合

 

RIAAで再生した場合

 

さすがにso-netブログはwavは再生できないので,mp3に変換していますけど.....。

さて,聴いてみてびっくり。やはり全然違います。RIAA再生だと,かなり音がおかしく,こんな音じゃない,っていつも思っていました。変な表現ですけど,ffrrで再生すると,いかにもピアノの音がします。こうだよな~って,改めて思っちゃいました。

さすがに古い盤なのでスクラッチ音が結構しますけど,まあ,初期盤と呼ばれるような古いレコードはこんなものです。でも,この盤は英国盤ですからいいですけど,基本的に国内で発売された初期盤は避けることにしています。まあ,プレスの技術が低かった,とは思いたくないのですが,とにかくスクラッチノイズがひどいものばかりで買いません。おそらく,LPは高かったので,それこそすり切れるまで聴いていたんだろう,と思います.....。

☆Schumann Piano concerto, Pf:Joerg Demus, Westminster XWN 18290

Demus Schumann.jpg

今度は正真正銘?,シューマンのピアノ協奏曲を聴いてみましょう。iruchanは最近,この曲に凝っていて,古いレコードを集めています。

ソリストはオーストリア出身のイェルク・デムスです。1928年生まれで,1956年のブゾーニ国際コンクールで優勝しています。オケはウィーン国立歌劇場管弦楽団で,指揮はロジンスキーです。録音は1956年ですから,同コンクールで優勝した年のようです。新しいので,▲のカーゾンより,こちらのWestminster盤の方が音がよいはず,と思っていましたが,改めて聞き比べてみるとカーゾンの方が音がよいですね~~。何より録音レベルがかなり低く,8dBほど低いです。音も低音は伸びていますが,高音があきらかにDECCAより劣っています。おそるべし,DECCA。

デムスは驚いたことに,亡くなったのは去年4月なんですね~。親日家としても知られ,多くの演奏家がキャンセルした,2011年の東日本大震災の直後にも来日してシューマンを聴かせてくれたそうです。歌手のシンディ・ローパーやレディ・ガガもそうでしたけど,すぐに日本に来てくれて,応援してくれました。本当にありがたいことです。ご冥福をお祈りします。

ウルトラセブンの最終回で使われたのはディヌ・リパッティとカラヤンのEMI盤ですが,一応,スクラッチ音がほとんどしないので,テープ録音のようですが,まだLPが登場する前のSP向けの録音のせいもあり,音が悪く,よりHiFiなLPの方がよかったと思います。でも,演奏自体はリパッティのはすごいですね。なお,先ほどのリンクに書きましたけど,青山通氏の本には,いろんなシューマンのレコードが出ていますが,この盤は出ていません。ウルトラセブンの音楽担当だった冬木透氏はこの盤のことはご存じだったと思いますが,採用されたのはもっと古いリパッティ盤でした。


レコードは放浪の名レーベルWestminsterです。強い米ドルにものを言わせ,欧州の名演奏家のレコードを多数出しました。なにより,録音技術も素晴らしかったようで,今聴いても非常に音はよいです。でも,今回,比較して気がつきましたけど,米国からエンジニアが出張して録音したので,いまいち,機材に不足があったのかもしれません。戦前,TELEFUNKENがSP盤の最高とされていましたし,実際,iruchanが今,聴いてもそのように思いますが,メンゲルベルクのSP盤はベルリンからアムステルダムまで出張して録音していたので,音がほかのTELEFUNKENに比べ,悪い,と言われていたのを思い出しました。

Westminsterはマイナーレーベルだったため,レコードの生産自体は米Columbiaに委託していたこともあり,RIAA制定前のカーブはColumbiaです。また,生産がColumbiaだったので,VOXやRemingtonなどの弱小レーベルと違って,盤質は格段によいです。今回,Columbiaカーブも備えていますので,万全です。

なお,Westminsterはマイナーレーベルでしたが,演奏や録音がよかったため,国内外でCDがたくさん出ていますが,本盤は出ていないようです。レコード自体,eBayでイスラエルの中古盤屋から買ったのですけど,いまいち盤質が悪く,ノイズが多いです。宛名や郵便局のシールがヘブライ語で書いてあって,読めませんでした.....。

       ☆          ☆          ☆

さて,本機はiruchanはモノラル盤用と書いていますけど,RIAAとffrrはステレオで聴けるように,2ch.で作ってありますので,一応,ステレオ盤も聴いてみたいと思います。CR型のEQアンプ,というのも初めてですしね~。

☆Rachmaninov Piano Concerto No.2, Pf:Sviatoslav Richter

richter rachmaninov.jpg

今度はリヒテルのラフマニノフの2番を聴いてみます。やはりロシアの曲はロシア人の演奏家,ですよね~~。

オケはワルシャワ・フィル,指揮はヴィスウォツキです。録音は1959年と古いですが,ステレオ録音になっています。鉄のカーテンの向こう側にすごいピアニストがいるってんでDGGのエンジニアがワルシャワまで乗り込んで録音したらしく,この曲の最高の名演のひとつ,とされていますね。


このディスク自体はどこが作ったのか,わからないのですが,Made in EUと書いてありますので,EUのどこかでしょう。一昨年,HMVで買った最新盤で,最近,LPを買うと,やはり今どきLPを作るとコストがかかるのか,とんでもなく高いですけど,これは1,700円と格安でした。でも,盤質はとてもよいですし,クラシックファンなら1枚持っていても損はない1枚だと思います。

録音もとてもよく,ノイズやひずみはありませんし,なにより初期のステレオ録音は結構,試行錯誤だったのか,うまくステレオ感の出ていないものも多いのですが,これはなかなかよい録音です。

演奏自体はとても遅く,浅田真央さんがソチで滑った曲で有名ですけど,この演奏じゃありませんね。これでは踊れんやろ~~[雨]

クラシックファンはこのように,好きな曲でも,これじゃない,ということで結局,自分の気に入った演奏が見つかるまで,延々と同曲異演盤を探し続ける.....と言うことになりますね。ウルトラセブンの本の青山氏も同じで,結構,この本は面白かったです。また,普通は同曲異演ということは異なる演奏者ですけど,フルトヴェングラーなんかは同じ人物なのにまるで違う演奏がたくさんあるので困っちゃうんですけど.....。

☆Frozen II

さて,お楽しみ.....。

実は,アナと雪の女王のサントラは海外ではLPでも発売されています[雪]

FROZEN II LP.jpg 歌詞カードもきれいです。

結構,値段が高いんですけど,レコードで ”Let it go!" が聴けるのはうれしいです。残念ながら,海外盤なので,英語の歌ですけどね.....。松たか子さんと神田沙也加さんの日本語盤がLPで出てるとなおうれしいんですけどね....。

今回は,アナと雪の女王2のサントラを聴いてみます。

CDと違って,収録曲が少なく,エンディングの "Into the unknown" は入っていません。まぁ,これは歌っているのがオッサンだから要らないや.....。

やはり,今回の目玉は "Show yourself" (見せて,あなたを)だと思います。"Into the unknown" より,こっちの方がよっぽど感動的な曲だと思うのは私だけでしょうか.....。

FROZEN II LP-1.jpg 

 レーベルもかわいい~~。B面はもちろん,アナですけど。

Garrard 301とDL103でアナ雪のレコードを聴いているのはiruchanだけだと思います....(^^;)。

ただ,聴いてみてびっくり。残念ながら,盤質はよくありません。そもそもセンターの穴が小さすぎて,スピンドルにはまらんちゅ~~の~~orz。おまけに結構大きなスクラッチノイズがして,ところどころ傷があるようで,大きなノイズが出ます.....。波形を見ていても,ノイズフロアが高く,さっきのリヒテルのLPと比べてみても,おかしいです。まぁ,今どきLPを高い品質で作れるところは少ないのでしょう。

PDVD_132-1.jpg ♪I'm dying to meet you....


う~~ん,断然,松たか子さんの方がいいや......。

       ☆          ☆          ☆

聴いてみて,やはり音のよいアンプだと自分ながら,そう思いました。超低ひずみOPアンプのLME49720Hを採用したこともあるのでしょうけど,EQアンプはやっぱ,CR型だよな~~って思いました。本当はLCR型がすごいらしいですけど.....。専用のタンゴのEQ-2Lは中古価格がこちらもものすごいことになっていますけど.....orz。

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