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幻の名盤~フリッツ・シュライバーのエロイカ~ [オーディオ]

2015年4月26日の日記

Fritz Schreiber Eroica.jpg 英Allegro ALL701

幻の名盤とされる,英Allegroのフリッツ・シュライバー指揮? ドレスデン国立交響楽団演奏? によるベートーヴェン交響曲第3番 "英雄” をついに入手しました。なんで "?" がついているのかはあとで.....。 

この盤のことを知ったのは音楽之友社発行の "Classic Record Book 1000"  のVol.1交響曲編に載っていたのが最初だと思います。1985年頃の発行だと思います。すでにCDの時代になっていましたが,未CD化の盤も多く,あえてLPを排除せず載せているのがよかったと思います。今でも安易にCDだけ,と言う本だと価値がないと思います。

といって,もうあの頃から30年くらい経っていますが,今ではCD化されていない盤を探す方が難しいくらいですし,むしろLPでは出ていなかったけど,CDなら出ている,という演奏も多いと思います。

この盤はいわくつきの名盤で,正規にどこかからCD化されることはありえません。プライベート盤で,いわゆる "板起こし" をしてもとのLPからCD化したものはあるようですけど。アレグロ社もとうになくなっていますから,原盤や原テープがどこかに残されているとはちょっと想像できませんし,そもそも著作権がどうなっているか.....。

で,なんでこの盤がいわくつきか,と言うと指揮者もオーケストラも実在しないから,なのです。

終戦後,平和な時代になると音楽が求められるようになりました。もちろん,戦場となった欧州や日本では物資が不足し,戦後直後はそれこそ音楽どころではない状況だったと思います。でも,そのうち経済が回復してくると古い電蓄を直して音楽を楽しむ人が増え,レコードの需要が高まりました。 そして,1947年,米コロムビアからLPが発売されると爆発的な人気を得ます。日本では1951年に日本コロムビアが発売したのが最初です。

LPは従来の78回転のSP盤から大きく進歩し,演奏時間も片面20分以上確保でき,片面4分ほどのSPとはえらい違いでした。周波数特性も10kHz以上に大きく伸び,非常にHiFiとなりました。材料も従来のSP盤はシェラックと呼ばれる天然材料で,壊れやすいのが欠点でしたが,LPは塩化ビニルでできていて,落としても割れなくなりました。初期のLP盤にNon Breakableなんて書いてあるのはそれですね。

録音時も戦時中にドイツが開発したテープ録音が採用され,ひとつの楽章を最初から最後まで演奏することが可能となり,SP録音のように4分ごとに演奏を区切って録音したりしないため演奏家のテンションが下がらずに済む,なんてメリットもありました。有名なEMIのフルトヴェングラーのスタジオ録音の "未完成" がせかせかとせわしなく,評判が悪いのはフルトヴェングラーが4分ごとに演奏を切らないといけないので切れちゃったため,なんて話もありますね。

LPは爆発的な成功を収め,需要が高まりました。といって値段が高く,日本では3,500円ほどしたようです。何だ,たいしたことないじゃん,と思ってはいけません。大卒の初任給が5,000円ほどだった時代です。

作れば売れる,と言う時代だっただけに特にアメリカではいろんなレーベルが乱立し,ガソリンスタンドやスーパーでもレコードを売っていたくらいです。アメリカだとRemingtonやVOX,Westminsterなんかがそうでしょう。Allegroというレーベルもこの類ではないかと思います。シュライバーのレコードはジャケットの質もよく,RIAAカーブ制定前の初期盤のような粗末なジャケットと異なり,きれいな印刷ですから,この頃からしばらく経って1960年頃の発売ではないかと思います。

これらのレーベルはそれほど会社の規模も大きくないし,当然,演奏家に支払われる代価も大したものじゃないはずなので,名演奏家と呼ばれるような大家の演奏によるレコードがあるわけじゃありません。でも,そういったレーベルでもあとで有名になった演奏家もいますし,有名じゃないけど実力派の演奏家も多かったし,何より,多くの人が安価で購入できるこういったレーベルのレコードで楽しんだので,今でもeBayなどの中古市場やオークションでは人気があります。特にWestminsterはいいですよね。私も大好きです。

こういったレーベルは怪しげな演奏家やオケが多いです。有名なところではWestminster盤のロジンスキー指揮 ”新世界” やショスタ5の演奏をしているPhilharmonic Symphony Orchestra of Londonですね。これは偽名です。もちろん,ロジンスキーは実在の人物で,これらの盤は名盤です。私も大好きな演奏で,おすすめします。 そういえば,ロジンスキーのWestminster録音には "未完成" もあります。これ,私は "未完成" のベストだと思っています。 

Fritz Schreiberなる人物は実在しませんし,Dresden State Symphony Orchestraなるオケも実在しません。ドレスデンと言えば有名な,ドレスデン国立歌劇場管弦楽団(ドレスデンシュターツカペレ)とは関係がなく,どこのオケかもわかっていません。一時はフルトヴェングラーの戦時中の演奏,と言う噂が出て,中古市場で高値がつきましたが,それはすぐに否定され,若き日のカラヤンとか,カイルベルトだとか,シルヴェストリという説もありますが,いまだに誰の演奏か,不明です。

どうしてこういうことが生じるのかというと,正規の演奏家やオケはどこかの大手のレーベルと契約していて,名前を出せない,と言うことがあったのでしょう。ちなみにロジンスキー盤のオケは今ではロイヤル・フィルであることがわかっていますし,最近の同じ演奏のCDはロイヤル・フィルと表記しているようです。 

シュライバーの "英雄" は,おそらくいままで,一番有名な演奏者不明のレコードだと思います。

長い間,ネットオークションや昔は国外の中古盤屋からリストを取り寄せたりしていましたが,いまだかつて入手することができませんでした。しかし,先月,たまたまeBayをのぞいていると出ているではないですか!

ちょっとハラハラしましたが,誰もほかに入札する人はなく,結局,最低価格で落札してしまいました。 たったの2ポンドで,送料込みでも10ポンドほどで,送料の方が高いくらいでした。売り手は英国のレコード屋さんのようです。

Fritz Schreiber Eroica1.jpg 演奏家とオケはにせ物です。

Fritz Schreiber Eroica2.jpg 

   ジャケ裏。ほかの曲も演奏家の表記は一切なく,やはり怪しげ~。

早速,ターンテーブルに載せて聴いてみます。残念ながら,どうもあまり盤面の状態はよくなく,かなりスクラッチノイズが出ます。特に,第3楽章には大きなキズがあり,イライラします。

でも.....。やはり話は聞いていたのですが,ものすごくいい演奏であることは確かです。出だしはちょっとおずおずとしたぎこちないもので,もどかしいくらいの感じですが,第2楽章の葬送行進曲は比類ないくらい重々しいし,第4楽章の盛り上がりも大変なものです。 時折咳払いも聞こえるのでスタジオ録音じゃない感じで,ライブならではの盛り上がりはすごいです。

これじゃ,確かにフルトヴェングラー,と言う話がでてもおかしくないくらい,すごい演奏であることは確かだと思います。

さっそく,HiMDでPCM録音し,パソコンで編集してCDにしてみました。自家製 "板起こし" ですね。以前は直接PCのサウンド入力につないで録音していましたが,やはりPCのサウンドチップはばらつきが大きく,今使っているPCのサウンドチップは音が悪いので,HiMDにしました。MDは圧縮しているから音が悪い,と言われましたが,最後の頃はPCM録音ができるようになりました。これだと16bit,44.1kHzサンプリングで録音レベルをマニュアルにしておけばCDと同じ音質で録音できますからね。PCにもWAVのまま取り込めますので便利です。

Hi MD.jpg HiMDで録音しました。 

おまけ 

ついでに,YMOの "ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー" がレコード棚にあったので録音してCDにしました。今じゃちゃんとCDが出ているんですからこんなことしなくてもよいんですけど。

solid state survivor.jpg alpha record ALR-6022

中学~高校の頃,このLPをよく聴いていました。懐かし~。1979年のリリースです。出たときは衝撃を受けました。その後,ヴァンゲリスとかELOとか,KRAFTWERKとかはまりましたけど,YMOのこのアルバムは本当に衝撃的だったと思います。

CDじゃなくて,LPの方が音がやらかくて,昔聴いていた感じそのものです。 懐かしくて何度も聴いています。

Garrard 301.jpg Garrard301で再生しました

当時のプレーヤはソニーのPS-X55でした。お金がないのでプリもパワーも自作の真空管式でした。中学生で真空管のプリアンプを自分で作って聴いていたのだからすごいな~......(^^;)。

SPもテクニクスのフルレンジを自作箱に入れたものです。このシステムでこのLPをよく聞いていました。あの頃に比べればずいぶんとシステムは向上しましたね~。 もっとも,プリはメーカ製のプリを使っていて,これじゃ退化だな......。昔の方が技術があったのかも。


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